グローバルにビジネスを展開する中国の搬送ロボットメーカーVisionNav Robotics(ビジョンナビロボティクス)は、日本市場への提案を強める。無人搬送フォークリフト(AGF)をはじめ無人搬送車(AGV)や自動けん引車なども活用し、搬送業務を自動化する。日本法人ビジョンナビロボティクスジャパン(東京都新宿区)の任娜(Kiki)ゼネラルマネージャーは「センシング技術と搬送ロボットの幅広いラインアップで、搬送のソリューションを提案したい。今後の開発を進める上で重要な新拠点を、来年日本に開設する」と語る。
VisionNav Roboticsは日本国内に向け、無人搬送ソリューションの提案を強める。同社は高度なセンシング技術を搭載したAGFで、物流現場の状況に合わせた搬送の自動化に取り組む。
AGFは通常、床置きのパレット(荷役台)を持ち上げて所定の場所に運ぶ。一方、トラックに積載したパレットの荷下ろしやパレットの上にさらにパレットを積み重ねる段積みなどは難しい。トラックやパレットの位置は一定でなく、毎回異なる位置を認識しなければならないためだ。
このような高難度の作業も含め、同社は搬送の自動化を実現する。AGF搭載のコントローラーが、
を処理できるため、高い精度で動作を制御できる。
また可搬質量や揚げ高などの異なる機種を多くそろえ、AGFの活用シーンを広げている。
Kikiゼネラルマネージャーは「日本の他に米国や韓国、オランダなどに現地法人がある。各拠点で現地スタッフの採用を重視しており、わが社の技術をそれぞれの市場に適した方法でアピールする。日本でもAGF市場は拡大しており、サポート体制をさらに充実させて提案を強化したい」と語る。
物流業界で人手不足は深刻化しており、搬送の自動化ニーズは高まっている。同社はこれまで鉄製パレットの段積みやトラックへの積み下ろしなどの自動化を物流現場に本導入しており、搬送ロボットの販売実績は全世界で約2500台に上る。
石毛将太セールスディレクターは、同社のソリューションの特徴を「縦にも横にも強い」と表現する。水平=横方向の搬送はもちろん、垂直=縦方向の搬送にも長けたAGFなど、合計で8つのシリーズをラインアップする。
今年5月に発売したAGFの「VNST20」は、水平方向の搬送に向く。可搬質量は最大2tを誇る。スペースの限られた現場でも稼働できるように、幅815mm×奥行き1600mm×高さ1650mmとコンパクトな本体サイズにした。
垂直方向に強みを持つAGF「VNR」シリーズは、棚の高い位置にもパレットを出し入れできる。揚げ高は標準で7m~8m、最大で12mのタイプも用意した。
他に悪路でも走行できるタイプなど、さまざまな用途を想定したAGFを開発する。
加えて、AGVや自動けん引車もある。それらの制御を統合して運用できるシステムで、無人搬送ソリューションを実現する。
最大で150台の搬送ロボットを一括して制御できる。AGFやAGV、自動けん引車の動作を連携し、例えばトラックの荷下ろしから倉庫内の搬送、棚入れまでの一連の作業の自動化を実現する。
石毛セールスディレクターは「1つの倉庫内に複数のメーカーの搬送ロボットが稼働していると、別々のシステムを連携させる上位システムが必要で、開発費が膨らむケースもある。わが社は用途ごとに適した搬送ロボットを用意しており、それらの群制御なども同一のシステムで実行できる」と説明する。
また物流の自動化を検討する際に、将来を見据えた計画が重要という。「初めに一部の作業の自動化だけを考えるのではなく、総合的な視点を持つ必要がある。その視点を持たずに搬送ロボットを導入すると、そのロボットでは他の自動化したい作業に対応できないなどの事態が起こり得る。トラックへの積載など難度の高い作業や別拠点への展開も見越した、搬送業務全体の自動化を想定すべき」と訴える。
国内の物流現場では、各社が「2024年問題」の解決に向けて取り組んでいる。2024年問題とは、24年4月からトラックドライバーの時間外労働時間の上限規制が適用されることで生じる、さまざまな問題の総称。ドライバーが倉庫に到着後、トラックへの荷物の積み下ろしなどを待つ「荷待ち」の時間が長時間労働の要因の1つになっている。
その解決策の1つが、物流現場へのAGFの導入という。AGFで荷物の積み下ろしや搬送を自動化、効率化できれば、ドライバーの待機時間を減らせる。同社はトラックへの積み下ろしに向く「VNE20」を中心に、搬送作業の自動化を「トラックソリューション」として提案する。
VNE20は可搬質量が最大4t、揚げ高が最大4.5m。8.5度までの傾斜のあるスロープを登れる。トラックの乗り入れ場所のような、屋外に近い路面でも走行できるようにした。
Kikiゼネラルマネージャーは「中国の企業から、トラックへの自動積み下ろしの要望を受けたのがきっかけだった。20年に本導入し、他の現場にも展開している。活用シーンを増やすべく、ユーザーの意見を取り入れながら開発に取り組む」と話す。
AGFの走行方式も新しくした。従来、壁や天井に設置した2次元コードを読み取り自己位置を推定する方式のみだったが、22年に「SLAM(スラム)方式」を採用した。
スラム方式は、センサーで自己位置の推定と周囲のマッピングをする。レーザー光で周囲を検知する3次元LiDAR(ライダー)を搭載しており、倉庫内の環境を立体的に捉える。
同社のAGFは、2次元コード式とスラム方式から稼働方法を選べる。一般的に2次元コード式の方が高い精度でAGFの位置を制御できるが、同社のスラム方式は2次元コード式と同等の精度を誇るという。
さらに、AGFが自己位置を見失わないような機能を開発した。周囲のマッピングをした際に、位置が変動する物体のを排除する。
例えばマッピング時に、パレットやかご車が置いてあったとする。そのまま認識した場合、それらを含めて周囲の環境とする。その後パレットやかご車が移動すると、マップとズレが生じ、AGFは自己位置を見失って停止してしまう。そうした移動するものをから排除することで、AGFが迷子になるのを防ぐ。
今後のグローバル展開を加速するため、24年に日本に「グローバルファクトリー」を開設する。同施設は、部品を製造し全世界へ供給するパーツセンターとしての役割を担う。また人員も増やし、日本国内でのサポートの充実も図る。
Kikiゼネラルマネージャーは「日本は製造業のレベルが高く、優れた管理体制や生産工程などをわが社にも取り入れていきたい。日本のユーザーとの協力関係も強いため、グローバルファクトリーの設置を日本に決めた」と語る。
まずは部品の生産やサポート体制の確立に取り組むが、いずれは開発拠点としても運用する。「現在わが社のAGVは、有人フォークリフトをベースにしている。今後は機体も開発し、AGFのソフトウエアとハードウエア、制御システムなどを全て内製化したい」と意気込む。
全世界へ搬送ソリューションを展開するうえで、日本を重要な拠点として位置付ける。また国内での存在感を一層強めるべく、展示会への出展も予定する。
10月18日から名古屋で開催される「メカトロテックジャパン(MECT)2023」では、岡谷鋼機のブースにVisionNav RoboticsのAGFが展示される。また12月には、東京で開かれる「2023国際ロボット展(iREX2023)」に自社ブースを出展する。搬送業務に課題を抱えるユーザーに向け、同社の技術を直接アピールする。
(記事の出典:https://www.robot-digest.com/contents/?id=1696932608-553708&dp=1)